
こんにちは!
この季節、統合報告書制作では、インタビューに向けた準備を進めているのではないでしょうか?
最近の統合報告書の傾向では、社長はもちろん、他の経営陣をはじめ、社外取締役から外部の有識者や現場社員の声など、決算短信や有価証券報告書に決して載らないような『生の声』を掲載しています。
故に、インタビューやライティングの量も質も求められるようになり、企業や制作会社も対応に追われています。
今回は、そんな統合報告書における『インタビューコンテンツ』その傾向を調べてみました!
第5回日経統合報告書アワードの受賞企業を参考に分析しました。
5つのメッセージ類型ごとに、受賞企業の実例とともに傾向を整理しており、とても長い記事になってしまっていますが付き合いください!

トップメッセージの傾向
トップメッセージ(CEOメッセージ等)には、単なる業績の報告や事業計画の羅列にとどまらず、
「企業がなぜ存在するのか(パーパス)」
「どのように社会課題を解決しながら利益を生み出し、成長するのか」
といういわゆる価値創造ストーリーが、経営者自身の言葉で力強く語られているか?
そんな内容が求められており、詳しくは5つの項目で分析します。
1. 不確実な環境認識と「パーパス(存在意義)」への回帰
多くのトップが、地政学リスク、インフレ、気候変動、AIなどの技術革新といった「予測困難で非連続な環境変化」に触れています。
だからこそのブレない軸としての「パーパス(存在意義)」や「企業理念」の重要性を強調しています。
- Sansan
生成AIによる激変のさなかにあり「見えにくい未来になっているからこそ、変わらない価値観を共有する」と述べ、企業理念が意思決定のスピード感やブレない軸に繋がっているとしています。 - 積水ハウス
企業理念「人間愛」を根本哲学とし、「『わが家』を世界一幸せな場所にする」というビジョンを未来への約束として掲げ、変わらぬ想いを示しています。
2. 成長の源泉としての「人的資本」と「企業文化(風土)」への注力
技術やビジネスモデルがいかに優れていても、それを実行するのは「人」であるという認識が共通されて表現している傾向があります。人的資本に対する考えも単に「社員にやさしい」だけではなく、どのように戦略に結びついているかを語るべきだと思います。
単なる人材育成の枠を超え、「エンゲージメントの向上」や「挑戦を許容する企業文化の醸成」が企業価値に直結すると語らることもあります。
- デンソー
「複雑かつ不確実な変化の時代において、最も重要なのは『人』の力」と言い切り、人の幸せと成長を経営の中心に据える決意を語っています。 - イトーキ
「社員エンゲージメントの先に目指すゴールがある」とし、変革の流れを止めずにエンゲージメントを高めることが究極的なテーマであると述べています。 - BIPROGY
「こんな人財になってほしい」という姿勢を明確にし、パーパスに共感する「志追求型人財」の育成を経営の軸に据えています。
3. 「資本コストと株価を意識した経営」の徹底と稼ぐ力の強化
東証の要請などを背景に、資本効率(ROE、ROIC等)や株主還元、事業ポートフォリオの変革について、トップ自らが「稼ぐ力」への強いコミットメントと財務規律を明確に語っています。
- マツキヨココカラ&カンパニー
新中期経営計画において「価値を共創し分かち合う」を掲げ、「稼ぐ力」を高めて適正に「還元」する好循環を創り出すことを明言しています。 - 荏原製作所・森永製菓
ROIC(投下資本利益率)を経営の最重要指標に位置づけ、資本コスト(WACC)を上回るスプレッドの最大化やポートフォリオ最適化についてトップ自ら具体的に説明しています。 - 三井不動産
「成長・効率・還元」を三位一体で捉え、EPS成長やROE向上に向けたアロケーション戦略を提示しています。
4. サステナビリティ(ESG)と事業戦略の「完全な統合」
環境(気候変動やサーキュラーエコノミーなど)や社会課題への対応を、CSRの枠組みではなく、「自社の競争優位性の源泉」や「成長ドライバー(事業機会)」として事業戦略と統合して語っています。統合報告書のあるべき姿ですね!
- アサヒグループホールディングス
「社会課題の解決を収益の源泉としたい」と述べ、サステナビリティと経営の統合が不可欠であると強調しています。 - 高砂熱学工業
空調を提供する会社から「環境クリエイター®」へと進化し、地球や社会にとって「なくてはならない価値のある企業」になることを目指しています。
5. ステークホルダーとの「対話(エンゲージメント)」への強い意欲
統合報告書を「一方的な報告書」ではなく、投資家をはじめとするステークホルダーとの「対話のためのツール」として位置づけ、トップ自らが耳を傾け、経営にフィードバックする姿勢を打ち出しています。余談ですが、IR担当者、部署からのメッセージを掲載する企業も増えてきましたね。
- IHI
過去に海外投資家から「本当に実行できるのか?」と猜疑心を投げかけられた経験を赤裸々に語り、戦略の実行力を結果として示すことで信頼を得るという強い決意を記しています。 - 三井不動産
情報の非対称性を解消するためにIR対話を充実させ、投資家との直接の意見交換を経営の意思決定の参考にすると述べています。
トップメッセージまとめ
トップメッセージの傾向は、「不確実な未来に対する明確なパーパス(大義)」を起点に、それを実現するための「人・文化(非財務)」 と「稼ぐ力・資本効率(財務)」の両輪を回すというロジックが非常に明確にされています。
そして、良い面だけでなく課題や過去の反省も含めて経営トップの「生の声やエピソード」で語られていることが、読み手(特に投資家)の深い共感と納得感を引き出す最大の共通項となっていますね。

CFOメッセージの傾向
最近のCFOメッセージ傾向では、単なる業績報告だけではなく、「資本市場の期待にどう応え、企業価値を持続的に向上させるか」というストーリーを語る傾向が見られます。
特に近年は、東京証券取引所の「資本コストや株価を意識した経営」の要請も背景に、より具体的で踏み込んだ内容になっています。
1. 「資本コスト」の明示と「エクイティ・スプレッド」の重視
多くのCFOが、自社の資本コスト(WACCや株主資本コスト)を具体的な数値で明示し、それを上回るROIC(投下資本利益率)やROE(自己資本利益率)を創出する「エクイティ・スプレッドの拡大」に強くコミットしています。
- アサヒグループホールディングス
株主資本コストを8%程度、WACCを5.5〜6%程度と試算した上で、ROE11%以上、ROIC10%以上を目指し、スプレッドを拡大する方針を示しています。 - マツキヨココカラ&カンパニー
株主資本コストを5.0〜7.0%、WACCを5.2〜7.0%程度と認識し、ROE12%以上を目標に掲げています。 - TDK
WACC7%に対し、ROICのハードルレートを10%に設定し、企業価値向上の算定式(FCF創出の最大化 ÷ 資本コスト + 期待成長率)を用いて説明しています。
2. メリハリのある「キャッシュ・アロケーション」の明示
創出したキャッシュを、成長投資、株主還元、財務基盤強化にどう配分するか(キャッシュ・アロケーション)を、具体的な金額や割合で明確に示す傾向が強まっています。
- マツキヨココカラ&カンパニー
6年間で創出する営業キャッシュフローのうち、成長投資に45%、株主還元に45%、財務基盤強化に10%を配分するという明確な割合を示しています。 - INPEX
前中計で有利子負債の削減を果たしたため、新中計では資金配分の優先順位を「成長投資と株主還元」へシフトさせると宣言しています。 - 三井不動産
「成長・効率・還元」を三位一体で捉え、3カ年で基礎営業CF1兆円、資産回収2兆円を創出し、成長投資2兆円、株主還元0.4兆円等に配分する計画を示しています。
3. 株主還元の強化と「累進配当」「DOE」の導入
株主への還元姿勢をより明確にするため、減配しない「累進配当」を基本方針とし、業績変動に左右されにくい「DOE(株主資本配当率・純資産配当率)」を新たな目標指標として導入する企業が増加しています。
- ニチレイ
DOE4%を下限とする累進配当を基本方針とし、安定的かつ持続的な配当を重視しています。 - りそなホールディングス
総還元性向50%程度を維持しつつ、新たにDOE目標3%程度(2029年度)を設定し、安定的な増配に注力しています。 - UACJ
アナリスト対話で、より安定的な配当を実現するためにDOEや累進配当の導入が投資家から提案される様子が描かれています。
4. B/Sのスリム化と「政策保有株式」の縮減加速
資本効率(ROE/ROIC)を高めるため、分母である資産・資本の適正化を図る動きが顕著です。
- MS&ADインシュアランスグループホールディングス
2029年度末の政策株式残高ゼロに向けて、前倒しで売却を進めています。 - 横浜フィナンシャルグループ
政策保有株式の縮減計画を見直し、2030年3月末までに連結純資産比10%未満とする新たな計画を策定しています。 - デンソー
低収益資産の圧縮として、手元資金の圧縮や政策保有株式の縮減を強力に推進しています。
5. 「非財務(人的資本など)」と「財務」の相関関係の可視化
人的資本やサステナビリティへの投資を単なるコストではなく、将来の企業価値向上につながる投資と位置づけ、非財務データが財務指標(ROSやROIC等)にどう影響するかをデータ分析で定量的に示す先進的な取り組みが見られます。
- マツキヨココカラ&カンパニー
AI・機械学習を用いたシミュレーション分析により、「組織風土スコア」の向上が「ROS(売上高経常利益率)」の向上に寄与するという裏付けを得たとCFOメッセージ等で報告しています。 - ANA
520種類の指標を用いた「価値関連性分析」を実行し、チームワークの醸成やエンゲージメント向上が売上・利益・株価に連関していることを定量的に実証しています。 - 荏原製作所
野村證券の協力を得て、人的資本指標の向上が将来の企業価値ドライバー(ROIC・WACC・期待成長率)に与える影響をシミュレーションしています。
6. 資本市場との「対話(エンゲージメント)」の最前線に立つ姿勢
CFO自らが国内外の投資家と対話し、その対話で得られた厳しい指摘や期待を社内にフィードバックし、経営戦略や情報開示の改善につなげていることを強調しています。
- レゾナック・ホールディングス
CFOと機関投資家との直接対談記事を設け、事業ポートフォリオやキャピタルアロケーションに対する市場の生の声と、それに対するCFOの考えを赤裸々に開示しています。 - IHI
投資家から「本当に実行できるのか?」と猜疑心を持たれた経験から、戦略の実行力を結果で示す重要性を痛感したエピソードが語られています。
CFOメッセージまとめ
CFOメッセージは、「稼ぐ力(ROIC/ROE)」の向上、それに基づく「明確な資金配分(アロケーション)」、そして「資本コストの低減」というロジックを用いて、自社の企業価値がいかにして向上していくかのストーリーを語る傾向が見られます。

CHRO・人事担当役員メッセージの傾向
CHROメッセージでは、単なる人事制度の紹介から、「事業戦略と連動した人的資本の価値創造ストーリー」や「投資対効果(ROI)の定量的な証明」を語るものへと大きく進化しています。
統合報告書でも鍵となるようなコンテンツだと思います。
経営・事業戦略と連動した「人材ポートフォリオの変革」
DX、グローバル化、新規事業などの事業構造の転換に合わせて、どのような人材が、どの程度必要なのか(質と量)を明確にし、採用・育成・配置を戦略的に行っていることを語る傾向があります。
- パーソルホールディングス
「非連続な成長を生むためには、事業戦略の要となるポジションに優れた人材をアサインする必要がある」と語り、次期中計に向けて「事業ポートフォリオと連動した動的な人材ポートフォリオの構築」を最重要テーマに掲げています。 - BIPROGY
業務遂行上の役割を「ROLES」として定義し、事業戦略に紐づく人材のタイプ・質・量を可視化。コア事業では「顧客ビジネスアーキテクト」、成長事業では「ビジネスプロデュース人財」などと明確にターゲットを定め、戦略的採用と育成を進めていることを説明しています。
人的資本投資の「効果測定(定量化)」と「企業価値へのパス」の提示
人的資本への投資が、実際にどれだけ生産性や財務リターンに結びついているのかを、客観的な指標やシミュレーションを用いて証明しようとする動きが加速しています。
- デンソー
すべての人と組織が価値を持続的に提供できているかを確認するため、付加価値額を人的投資で割った「人的投資生産性」という独自の指標を用いてモニタリングし、効率的な人的資本経営を推進していることを語っています。 - 荏原製作所
証券会社と協働し、自社の「一人当たり営業利益」や「女性基幹職比率」の向上が、将来の「ROIC-WACCスプレッド(資本効率)」や「期待成長率」にどれだけプラスの影響(+0.75%pt等)を与えるかをシミュレーション分析し、定量的な根拠として開示しています。 - パーソルホールディングス
人事施策が競争優位性や財務価値にどうつながるかを示す「人的資本インパクトパス」を開示し、その解像度を高めていくことを宣言しています。
「キャリアオーナーシップ(自律)」と「挑戦」を促す制度・風土改革
会社がキャリアを与える「メンバーシップ型」から、社員自らがキャリアを選択する「自律型(ジョブ型要素の導入)」への移行と、失敗を恐れず挑戦できる環境、いわゆる心理的安全性の整備を強調しています。
- りそなホールディングス
「職務価値に応じた処遇体系」と「多様な就業価値観への順応」をキーコンセプトに人事制度を改定。累計330億円の人財投資を行い、従業員がプロフェッショナルとして自律的に成長する支援を語っています。 - イトーキ
「エンゲージメントは会社の成長を引っ張るエンジン」と断言し、「前例踏襲・平等一律・指示待ち」からの脱却を目指して、成果に応じた処遇(Pay for Performance)や専門性を重視する人事制度改革を進めています。 - 高砂熱学工業
「挑戦しやすい風土の醸成」を重点施策とし、社内公募制度の導入に加えて、上司からの支援や期待の明示がエンゲージメント向上に直結するという考えのもと、管理職向けの評価者研修や制度改善を推進しています。
独自の「企業カルチャー・パーパス」の徹底的な言語化と浸透
エンゲージメントを高める求心力として、自社独自の価値観(カルチャー)を言語化し、それをいかに現場に浸透させているかを熱量を持って語る傾向です。
- Sansan
最大の強みは「強固なカルチャー」であるとし、「グロースマインドセット」や「AIファースト」といった年間テーマを全社にインストールする取り組みを説明。全社員で延べ5,000時間を超える「パーパス議論」を行うなど、カルチャー醸成への圧倒的な投資を語っています。 - TDK
多様な人財と個性のぶつかり合いから生まれるイノベーションの力を、オーケストラではなく「ビッグ・ジャズ・バンド」に例え、同社ならではのDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の強みとして表現しています。
CHRO・人事担当役員メッセージまとめ
CHRO・人事担当役員のインタビューでは「定性的な制度の紹介や働きやすさのアピール」から脱却することが重要です。「その人材投資は、具体的にどう事業の利益や資本効率に跳ね返ってくるのか?」「現在の事業ポートフォリオに対して、どのような人材のギャップや不足があり、どう埋めるのか?」といった、投資家目線の少し踏み込んだ問いに解答することがポイントになると思います。

社外取締役のメッセージの傾向
社外取締役のメッセージやインタビュー、対談記事の傾向を分析すると、ガバナンスの「体制(形式)」の説明から、取締役会で「実際にどのような議論が行われ、どう経営を監督・牽引しているのか」をリアルに伝えるコンテンツへと大きく進化していることがわかります。
1. 形式の多様化:「座談会」や「外部目線を交えた対話」の増加
取締役単独のメッセージだけでなく、複数の社外取締役による「座談会」や、執行側との「対談」形式が増えてきています。
さらに先進的な傾向として、機関投資家や外部有識者を直接ゲストとして招き、市場からの厳しい質問に社外取締役がどう答えるかを掲載するケースも増加しています。(次の章で取り上げています。)
- ハーモニック・ドライブ・システムズ
機関投資家と社外取締役5名が、事業ポートフォリオや資本効率、役員報酬について直接対話する特集を組んでいます。 - 野村総合研究所
社外取締役と機関投資家が、パーパスの実現や資本マネジメント、役員報酬のインセンティブについて鼎談を行っています。 - レゾナック
サステナビリティアドバイザーや投資家を交え、企業の価値創造やKPIについて議論するプロセスを公開しています。
2. 「攻めのガバナンス(リスクテイクの後押し)」の強調
社外取締役の役割をコンプライアンスなどの「守り」だけでなく、企業価値向上のための「攻め」として語る傾向が顕著です。特に「事業ポートフォリオの変革」と「資本効率(ROIC・PBR等)」について、社外取締役がいかにリスクテイクを促し、不採算事業の整理を求めているかが具体的に語られています。
- J.フロント リテイリング
中長期の成長に向けた大型投資の必要性や、「妄想で終わらせず、思い切って可能性に挑戦すべき」と執行側の背中を押す姿勢が語られています。 - ニッスイ
既存事業の延長線上ではなく、事業の選択と集中、資本コストを踏まえた成長ストーリーの構築を強く求めている様子が描かれています。
取締役会議長・各委員長による「運営実態(ブラックボックスの解消)」の開示
社外取締役が務める「取締役会議長」や「指名・報酬・監査委員長」からのメッセージが独立して設けられ、委員会や取締役会がどう運営されているかの裏側が明かされています。
- ブリヂストン
取締役会議長(社外取締役)が、アジェンダの設定方法、非業務執行取締役だけの意見交換会、CEOとの1on1ミーティングを通じたファシリテーションの工夫などを詳細に語っています。 - 積水ハウス・荏原製作所
指名・報酬委員会の委員長が、次期CEOのサクセッションプラン(育成・選定プロセス)や、業績連動・株式報酬の改定プロセスについて、透明性をもって語っています。
4. コンプライアンス事案や課題に対する「本音」の議論
自社の不祥事や課題から目を背けず、それを契機とした風土改革やガバナンスの再構築について、社外の目線から厳しくも建設的な意見が交わされています。
- MS&AD
一連の不祥事を受け、従来のビジネスモデルに内在するリスクへの認識不足を指摘し、監査等委員会設置会社への移行を通じた監督機能の強化について語り合っています。 - イトーキ
発生したコンプライアンス事案を真摯に受け止め、現場が相談しやすい風土づくりや情報収集体制の強化について監査役や社外取締役が議論しています。 - 鹿島建設
役員報酬水準の引き上げに関する社内外の意見の対立や、女性幹部の少なさ(ダイバーシティの課題)といった道半ばのテーマにも率直に言及しています。
5. 取締役会外での活動(現場視察・対話)のアピール
取締役会の場だけでなく、社外取締役が工場や海外拠点の視察に赴いたり、執行役員や現場社員と直接対話したりする「オフサイト」での活動が、写真付きで豊富に紹介されています。これにより、社外取締役が「現場の手触り感」を持って経営監督にあたっていることをアピールしています。
社外取締役のメッセージまとめ
「形式的な報告からリアルな本音の開示への進化」が傾向としてうかがえます。
手法としては投資家を交えた座談会が主流となり、リスクテイクを促す攻めの議論や現場視察など、実効性を伴う監督機能の実態が透明性高く語られています。

外部アナリスト・有識者対談傾向
前述のとおり最近の統合報告書では、外部のアナリストや有識者との対談やインタビューが掲載されるケースも増えてきました。
大きく分けて、
「①機関投資家・アナリストとの対談」
「②学識経験者や専門家などの外部有識者との対談・インタビュー」
の2つのパターンがあります。
自社の課題に対する外部からの厳しい意見や専門的な知見をそのまま紙面に掲載することで、透明性の高さや対話への真摯な姿勢をアピールする狙いがあります。
1. 機関投資家・アナリストとの対談事例
資本市場のプレイヤーを直接ゲストに招き、資本効率や事業ポートフォリオ、成長戦略について経営陣や社外取締役と議論を交わす事例が増加しています。
- UACJ「アナリストとの対話」
野村證券(株)のエクイティ・リサーチ部長 松本裕司氏を招き、UACJの財務本部長と対談。価格転嫁の課題や、海外拠点の利益率改善、ROICと成長投資のバランスなどについてアナリストの視点から具体的な指摘を受けています。 - 「インパクト投資家との対話」
コモンズ投信(株)の代表取締役社長 伊井哲朗氏を招き、田中社長と対談。リサイクルを通じた「社会価値」と「経済価値」の両立(外部不経済の内部化)について議論しています。 - レゾナック・ホールディングス「CFOと投資家対談」
野村アセットマネジメント、三井住友トラスト・アセットマネジメント、アセットマネジメントOneという国内実質株主上位3社のシニアアナリストらを招き、染宮CFOと対談。「事業が多すぎる」「PBR1倍割れ解消への道筋」「従業員のエンゲージメント」といった投資家からのストレートな疑問や懸念に対し、CFOが直接答える非常に踏み込んだ内容となっています。 - りそなホールディングス「機関投資家・社外取締役座談会」
英国の資産運用会社マラソン・アセット・マネジメントの日本調査代表 高野雅永氏を招き、取締役会議長および各委員会委員長(社外取締役)と対話。パーパスの実現度合いのモニタリング方法や、役員報酬によるインセンティブ、取締役会の実効性について投資家の目線から意見が交わされています。 - ハーモニック・ドライブ・システムズ「特集:機関投資家と社外取締役の対話」
日本企業のガバナンスにフォーカスした株式運用戦略の責任者であるUBPインベストメンツ(株)のズヘール・カーン氏と、5名の社外取締役による対話。市場規模と収益性の評価、グループのモニタリング体制、設備投資の意思決定への反省、報酬制度など、多岐にわたる経営課題を議論しています。
2. 外部有識者・専門家との対談・インタビュー事例
サステナビリティやガバナンスといった専門性の高いテーマにおいて、学識経験者やコンサルタント、弁護士などを招き、客観的な評価や助言を得る事例です。
- 三井不動産「有識者×社外取締役対談」
気候変動やサステナビリティ政策の専門家である東京大学 未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授を招き、河合社外取締役と対談。新たに策定した「街づくりにおける環境との共生宣言」の意義や、今後の情報開示への期待について議論しています。 - レゾナック・ホールディングス「対談:サステナビリティの事業への実装」
同社が新設した「サステナビリティアドバイザー」である外部有識者3名(法政大学 長谷川直哉教授、早稲田大学 伊坪徳宏教授、りそなアセットマネジメント 松原稔氏)と、最高サステナビリティ責任者(CSuO)が対談。同社のサステナビリティに関するこれまでの取り組みへの評価と、次の10年に向けた課題について議論しています。 - IHI「社外取締役座談会」
社外取締役4名の座談会に、サステナビリティ・ガバナンスを専門とするHRガバナンス・リーダーズ(株) 代表取締役社長CEOの内ヶ崎茂氏がファシリテーター兼有識者として参加。資本市場からの期待の高まりや、モニタリング機能の強化、次世代経営人材の育成について社外取締役の意見を引き出しています。 - ブリヂストン「【特集】取締役会議長インタビュー」
会社法やコーポレートガバナンスを専門とする倉橋法律事務所の倉橋雄作弁護士が、独立社外取締役であるデイヴィス・スコット取締役会議長にインタビューを実施。「質の高い議論と意思決定の担保」や「執行側との情報共有のあり方」などについて、第三者である専門家の視点からガバナンスの実態を掘り下げています。
外部アナリスト・有識者対談傾向まとめ
掲載事例なども少なくないことから、外部有識者との対談は一つのトレンドともいえます。
ただ、外部の方との対談は、人選や調整、確認など、一段と落難易度が高くなるのも事実です。
非常に長い記事にお付き合いいただきありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?
このようにまとめると、統合報告書のトレンドも見えてきました。
これからインタビュー、メッセージ作成シーズンですので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。